新メンバーになってから初のツアー。ニューアルバム『GRAVITY』がまずまずの出来だけに、その真価を問われるライブとなる。やはり一番心配なのは新メンバーの宮崎さん。F & W LIVE＠六本木PIT-INNでは実力が充分に発揮できなかったのは明白だった。それが今回はどのくらいの実力があるのか、そして、今回はそれが発揮されるのだろうかという点に注目が集まったように思う。
さて、会場に入ってみると、左手にはグランドピアノが。「なんだ、きちんと要求すれば用意できるのか。じゃあ、なんで和泉さんのときに…」と思ったのは私だけではなかったらしい（周りの反応を見ると）。その他の配置は、その左手奥にキーボード一般、中央奥にベース、右手奥にドラム、中央手前にギター、右手手前に吹き物一般、となっていた。バスドラに何かペイントしてあったけど、なんだったんだろう。よく見えなかった。
安藤まさひろ(G)、難波正司(Key)、則竹裕之(Dr)、須藤満(B)、宮崎隆睦(Sax,Flute,EWI)
前半
01 DOWN TO EARTH
02 SAILING THE OCEAN
---MC
03 MS. BRACING
04 THE FOREST HOUSE
05 UNEXPECTED LOVER
---MC
06 AWAY FROM HOME
07 CAPE LIGHT
だいぶ遅れ気味に開演。ゲーム音楽っぽい打ち込みがフェイドインして、しばらくしてメンバーが登場。そしてそのまま「DOWN TO EARTH」に流れ込んだ。ダンディな曲だ。宮崎さんのサックスの音が、CDで聞いたものよりも力強い。とういうか、芯の通った音をしている。ややツメの甘い点があるものの、ファンとしてはひと安心。
安藤さんはいつものギターではなく、前回の年末ライブでも使っていたあのビンテージ物（？）のギターである。全編を通じてこのギターをメインに使っていた。音が柔らかく味があるので、カッティングでもけっこう目立つ。則竹さんのドラムの音も、特にフロアタムの音が厚みのあるいい音をしていた。スティックの持ち方を変えたという話を聞いていたせいなのか、それとも、スピーカーから近い位置にいたからなのか。
「SAILING THE OCEAN」は、難波さん、須藤さん、則竹さんのキメのパフォーマンスが、単に右手で天井を指差すだけなんだけど、面白い。うまくタイミングをつかんで、今度の野音で自分も試してみようかと思ってしまった。難波さんはこの曲に限らず手の動きが多い。F & Wではメンバーを仕切っているのかと思ってしまったが、どうもそうではなく勢いで手を動かしているらしい。
「MR.BRACING」から「THE FOREST HOUSE」に移るときに難波さんがグランドピアノに移動し、ソロの間奏があった。初めてじっくり聞いた難波さんのピアノソロだった。難波さんのサウンドはビー玉を転がすような感じの、粒の揃った音だ。和泉さんほどの繊細なタッチはないが、くっきりとした像を浮かび上がらせてくれる、そんな印象を持った。
「AWAY FROM HOME」では須藤さんがエレクトリック・アップライト・ベース（名称はよく分からん）を使っていた。全体に高音のエコーのかかった曲に、この太い音がなんとも心地いい。これからも随所で使って欲しい。
つづいて、サックスソロから「CAPE LIGHT」へ。５曲目の「UNEXPECTED LOVER」でもそうだったが、まだ、宮崎さんのサックスは、なんというか、情感がないというか、艶っぽさがないというか、バラードはいま一つという感じは否めない。でも、これは初期の本田さんにも言えたことなので、宮崎さんも経験を積めばきっと出来るようになるでしょう。期待しています。
後半
08 ONE STEP BEYOND
09 B & Dr DUO
10 EXPLORER
---MC
11 RISE
12 THE SEVEN WONDERS
13 KNIGHT'S SONG
14 RADIO STAR
「ONE STEP BEYOND」と「EXPLORER」の間にドラムとベースのデュオが入るのは、予想通りの展開。このデュオも「TRUTH」と同じでそろそろ飽きられてくることでは…、と心配をするものの、始まるとついつい、のめりこんで聞いてしまうのは、これまた「TRUTH」と同様（苦笑）。
そして終盤はノリノリの曲で突っ走る。こういうノリの良い曲では宮崎さんのサックスは映える。ここでも芯の強い音をを再確認した。どの曲か忘れてしまったが、テナーサックスも吹いていた。大丈夫かな、と思ったが、杞憂に終わった。個人的にはこちらの音の方が好みかな。ただ、動くことを優先させて、ワイヤレスマイクにしていたので、ちょっと音質が落ちていたのは残念。アルトの音質が良かっただけに余計にそれを感じてしまった。
難波さんはやっぱりキーボディスト。和泉さんがピアニストであったのとのはこの点が大きく違う。電子ピアノでさえ、その特徴を活かし、あえてアコースティックピアノとは違う音を出していた。でも、これはいいことだと思う。力強い音色・タッチにしていたので、その分、これらのノリのいい曲でも音が埋もれることが少なかったと思う。
「RISE」「RADIO STAR」はホントに久しぶり。ライブでウケル曲はもっとあるはず。昔の曲をどんどん復活させて欲しい。
アンコール
ENC1-1 PRAISE
---
ENC2-1 TRUTH
ENC2-2 ALL ABOUT YOU
アンコールの１曲目はニューアルバムでも印象の強い「PRAISE」。安藤さんのギターが映える。曲調が昔の（アルバム『MAGIC』の頃の）スクエアを思い出させる。
２回目のアンコールではやっぱり出てきました「TRUTH」。今回は新メンバーのお披露目ということもあって、必ず出てくると思っていた。そして、「ALL ABOUT YOU」で締めくくり。もう一回アンコールがあるかなという曲順だったけど、すぐに客電が点き、興奮を残しつつ客席を立つこととなった。
全体としての印象は、「安心した」というところ。F & Wでは一抹の不安が残ったし、ニューアルバムではその不安が若干やわらいだものの、やはり拭い去ることはできたなかった。しかし、今回のライブを聞いてやっと安心することができた。宮崎さんのサックスや、全体のまとまりなどには、まだツメの甘さが残るものの、それは何度かステージをこなすうちに解消されるであろう程度だった。次の野音が楽しみだ。