この作品も舞台のために書かれた作品。シナリオ形式は慣れないと本当に読みにくい。特に最初の舞台設定は読むのが億劫になる。他にも、ト書きで人物の動きが描かれていても、読みとばしてしまったり、読んでも実際には頭に思い描いていないことが多い。セリフばかり追ってしまっている。幸いなことに、ト書きにはあまり事件の鍵になるようなことがないから、それほど困ることはないんだけれど。
今回のは「事件はいかに複雑化したか」というのがテーマなような気がする。それほど、いろんな事情が絡んでいる。それが「蜘蛛の巣」である所以か。でも、ちょっと盛り込みすぎかな。事件は複雑に見えるんだけど、実はその事情はシンプル、というのが一番面白いと私は思っている。
ただ、今回はその複雑な事情を表に出している点が面白い。普通、そういうのは事件を解決するときに一気に明かされるものだけど。この作品はそれをメインに描いていて、それによって人がどう振りまわされるかがよく分かる。ちょっと実験的な作品だと思う。