SF…なんだろうか、というのが第一印象。政治シミュレーション、と言った方がしっくりくる。そう思うのは、科学の要素が少なく、政治・外交の要素が大半を占めているからだ。「日本沈没」では科学と政治のバランスが半々ぐらいだったが。
いかに東京にいろんな機能が集中しているか、がこの作品を通して改めて認識させられる。漠然と分かっていても、具体的に考えたことはなかった。それがこの作品では詳細に表されている。ここで羅列しようと思ったが、あまりに多すぎて整理できなかったほどだ。しかし、国際経済における東京の影響はあまり描かれていなかったな。少なくとも、世界中の株価は暴落すると思うんだけれど。
正体不明の"壁"。この科学調査に関して、もっとも興味をそそられたが、具体的に描かれることは残念ながらなかった。ただ、「どういう調査をやるか、をきめるだけで、最低一週間かかるだろう…」という大田原老人のセリフは、思わずうなづいてしまった。正体がなんであるかを仮定して、それを証明するための調査方法を決めることが、科学では最も重要だからだ。しかも、今回は仮定すらできないので、調査方法を決めるのはさらに難しい。手当たりばったりでやっても混乱するだけだから、きちんと整理しなければならないだろう。それを踏まえた上で、私だったらどんな調査をどんな手順でするだろうか。考えるだけで楽しい（現実だったら楽しいといったら不謹慎だろうが）。
最後の終わり方は、う〜ん、こうきたか、という感じ。ここからあとは（この作品の主題とは関係なから）読者の想像に任せるよ、と言われているようだ。