読み終わったあと、「青い鳥」を連想した。そういう結末とはね。でも、そんなのありかなぁ。
悪い意味で、テレビのサスペンスドラマの原型のような作品だ。ミスディレクションはありありと分かるし、恋物語はチープだ。男女二人で謎解きに走るのは、トミーとタペンスを思い起こさせる。しかし、この作品はトミーとタペンスほど会話が面白いわけではなく、今ひとつパッとしない。
ちょっと面白かったのは、ボビーの「まるで僕たちは、役なんかないくせに、第二幕のまんなかあたりで舞台にとび出してしまって、役があるみたいな顔をしていなければならない、といった具合なんだ。おまけに、いちばんやっかいなのは、この劇の第一幕がとうなっているのか、さっぱり見当がつかないということさ」という台詞（小説中でしゃべらせてしまうとは (笑) ）。ほとんどのミステリに共通する構造をうまく表現している。犯罪の起こる背景が描かれているはずの第一幕は（探偵役はもちろん）読者には提示されていないのだ。最後の謎解きで第一幕のあらすじが明かされる。逆にいえば、この定型をとっていれば、どんな話でもミステリっぽくなるのかもしれない。