やっと読み終わった。3月から毎月2冊ずつ刊行されていた（ハードカバーの文庫化だった）ので、他の本を読んでいると、なかなか読み終わらないという状況だった。くわえて、最後の2冊が長かった…。
竜崎晶の一人称で書かれた前シリーズ 『新・天狼星 ヴァンパイア 上・下』 を、三人称で書いたのがこの作品。伊集院大介の行動がメインに描かれている。主人公なんだから当たり前といえば当たり前だけど。前シリーズでは分からなかった、さまざまな謎や伏線が解き明かされる。短編でこういった趣向の作品を読んだことがあるけれど、長編では初めて。森博嗣さんの『幻惑の死と使途』と『夏のレプリカ』は、似て非なるもの、かな。
やたらと長々と語る場面が多い。特に伊集院大介は語りすぎ。前々からそう思っていたが、今回はつくづくそう思った。しかも、論理的に順序立てられてはおらず、普通に人がしゃべるように、話があっちに行ったりこっちに来たりする。ある意味では、リアリティーはあるけれど、「読む」ほうとしては、結局何が言いたいのかが分かりにくくなってしまう。そして、だれる。
とはいえ、内容は満足するものだった。連続殺人事件を単なる猟奇的殺人として捉えているのではなく、現代社会を投影した犯罪であると捉えている。もちろん、空想の事件だが、現実に起きている最近の数々の事件をベースにしているので、実際にこの種の事件が起こるかもしれない、そういう社会になりつつある、と思わせられる。
ラストは意外な展開、そして結末。作者も言っているように、まだまだ天狼星シリーズは続きそうな感じだ。今度は竜崎晶がどれだけ成長を遂げて読者の目の前に登場してくれるだろうか。