零時館
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鬼女の都

菅浩江 著
祥伝社、905円、ISBN4-396-20725-5、2001年刊

京都の表の顔と裏の顔。京都に住んでいる人には当たり前のことかもしれないが、観光にきている人には気がつかないことが多いだろう。

私も京都に住んでみるまでは単なる観光都市としての顔しか知らなかった。しかし、それは「鬼が見せる夢」だとこの本は表現している。実際に住んでみると確かにそんな気がした。観光客が見たいものを見せている。それが京都だ。他の観光都市も大なり小なりそんな面があるのだろうが、京都は別格といってもいいほどだ。極端に言うと、観光客が見ている京都は本当の京都ではない。さらにそれは人間に関しても同じことが言える。それがこの事件を解く鍵となっているし、この小説のテーマともなっている。

作者の菅さんは京都生まれの京都育ちで、今も京都に住んでいる。おそらくこの小説は自分の経験がかなり大きな比重を占めていると思う。小さいときから知っている現実の京都と観光客の見る京都とのギャップを日頃から感じていたのだろう。そういった経験がこの小説を書いた動機なのではないかと推測している。おそらく、京都の住人は一様に同じような経験をしているはずだが、それを小説にしてしまおうと思い立つこと、そして見事に推理小説の形で結実させてしまうところは、実はすごいことなんじゃないかと思う。

(2002/01/02 読了)

E-mail : reijikan-kanshu@hotmail.co.jp
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