これは森ファンにはうれしい一冊。二つのシリーズの準主役（主役かもしれないけど）、萌絵と保呂草の共演となっている。この二人のやり取りが面白い。それぞれ犀川と紅子を相手にだぶらせたりして。
それだけじゃなく、萌絵に付き合わされた国枝桃子も面白かった。相変わらず無表情なものの、言動に感情がこもっている場面も見られて、そういう一面もあったかと驚かされた。
今回は講談社ノベルス20周年記念の密室企画の一つとなっている。もちろんメインのトリックは密室。しかし、森さんにしては珍しくパズル的要素が強かったような気がする。急いで読んでいたσ(o_o;)には謎は解けなかったが、じっくり読んでいる人には解けた人も多かったかもしれない。
結末は、そうきたか、という感じ。これからに期待させる終わりかただった。
ところで、地の文で保呂草と秋野(保呂草の偽名)とが状況によって書き分けられていた。おそらくその状況で誰をメインに描いているかによって使い分けたのだろうが、今ひとつ基準がはっきりしなかった。細かいことだが、ちょっとひっかかった。