レース用エンジンや環境対策エンジンの開発に携わってきた著者が、自分の半生と開発の経過を記している。話があっちに行ったりこっちに行ったりして少々読みにくかったが、一貫しているのは、モノを開発するとはどういうことかを、いろんな経験を通じて書いていることだ。
アビリティとコンピテンスという言葉が出てくる。アビリティーは論理的に考える力、コンピテンスは実現する力で、この二つで人の能力が表されるという。本書ではもちろん開発に対してこの考えを当てはめているが、もちろん研究にも十分当てはまる話だ。
試験ではアビリティーしか測れない、著者は指摘する。そういう意味では、コンピテンスを磨くのは、いまの受験体制ではなかなか難しい。ゆとり教育でめざすのは、アビリティーだけではなく、コンピテンスを伸ばすことだと思う。そういう人が増えれば、きっと、研究や開発にとてもいい影響が出てくるだろう。
めったにこういう工業に関する本は読まないが、面白く読めたし、とても得るものが多かった。