南極には手付かずの自然があり、また政治的にも特別な立場にある領域だから、南極を観光するにはそれなりの知識と教養が必要だと、著者は説く。具体的な悪い例がいくつか挙げてられていて、なるほどな、と思う。しかし、観光地として開かれるとしたら、なかなかそれを求めるのは難しいかもしれない。日本の観光地を見れば自ずとその不安が出てくる。もっとモラルが重要視される社会になる（著者は意識改革といっている）まで、待たなければいけないかもしれない。
最後の現実に行われた南極一周の旅の様子は大変興味深かった。実際に観測基地に訪れたり、景勝地を探索したりといった様子が具体的に述べられている。だから、実際の観光はこうなんだな、将来もおそらくこういう路線で行くんだろうな、というイメージがわきやすかった（もっとも、観光が広く行われるようになったら、あまり観測基地に負担がかからないようにはするんだろうけど）。
前半に、南極に関する知識、として南極の発見・探索の歴史が述べられている。しかし、これはあまりにも長すぎると感じた。観光目的ならば、もっと簡略に（半分ぐらいに）述べたほうが頭に入る。
それから、もっと詳しい地図が欲しい。少なくとも文中で触れられている地名は必ず地図中に記しておいて欲しかった。私は一般の人より多少南極に関しては知識をもっているが、それでも地名を追っていくのは大変だった。