それぞれの章が、各登場人物の視点で描かれている、ちょっと変わった形式。でも何かに似てるな、と思ったら、井上夢人著「99人の最終電車」（WWW連載、未完）だった。それと筒井康隆著「上下左右」にも似ている。どちらも推理小説ではない（「99人…」はミステリだけど推理小説ではないと思う）が、この作品ではこの形式をはじめて推理小説に応用したのだと思う。森さんは筒井ファンらしいので、「上下左右」にヒントを得たのかもしれない。
今回、犯人は最後まで絞りきることが出来なかった。最後の解決で「そっちできたかぁ」という感じ。その可能性も頭に入れていたんだけどね、と負け惜しみするんだけど、やっぱり絞り切らせなかった作者の勝ち（勝負してる訳ではないんだけど）。
ところで、この本、とても安いと思った。コジマケンのイラストを生かすためか、とても装丁がいい。紙の質がいいし、カバーをめくってもまたきれいなイラストが描かれている。これで1600円とは。とてもお買い得。