ときどき気楽に読める本が恋しくなる。とくに長編ばかり読んでいる時がそうだ。さらに SF の場合、長編になればなるほどシリアスさが増す傾向があるのでなおさらだ。そんなときにこんなおバカな SF 短編集を読むと、とてもホッとする。
以前はこんな SF 短編がとても多かった。しかしなぜか近年減っていて、シリアスな長編ばかりが残るようになっていてとても息苦しい感じだった。それを察して岬・大原夫婦が始めたこのシリーズはとても意義深いものがあると思う。
この本（と宇宙チャーハン篇）は、そのシリーズの中の第 8 弾にあたるらしい。時々このシリーズの本を見かけていたが、もうそんなに出ているとは知らなかった。
実は買ったのはこれが初めて。内容は、全く期待を裏切らず、ほんとに気楽に、笑って読める短編が多く掲載されている。「ステレオタイプワールド」「旅人算の陥穽（かんせい）」「実存うにょーくん」などはもう純粋に楽しめた。
そんななか途中に配置されている、しっとりとした「とんべえ」やヘビーな「特別廃棄物」がいいスパイスとなっていて、短編集として飽きない創りになっている。編集の大変さがうかがえる。
最後の「実存うにょーくん」は小室みつ子さんの作品。TMN(etwork) などの曲の作詞者として知っている人だったので、ここでこの名前が出てきたのにはびっくりしてしまった。またこの作品がとびきり面白い。TMN(etwork) ファンだからこそ分かるネタがあってつい爆笑してしまった。今思い出してもつい笑ってしまう。