菅さんの長編第 1 作。あとがきで「難産だった」とある。その苦労がうかがわれる。とくにその話の流れ。何度も練り直したんじゃないだろうかと思われる。新人にありがちと思われる「勢いのままに書いちゃった」という感じが見られない。そういう意味では新人離れした感じがする。もっとも、今の菅さんの成功を知っているからそう思えるのかもしれない。発刊当時にそういう先入観なしに読んでいたら、また違った印象をもっていただろう。
この作品もそうだが、SF では（とくにマンガやアニメでは）、人間の宿命（業とか原罪とか）をテーマにする物語が多いように思う。ミステリや普通の小説・マンガでは少ないんじゃないだろうか。菅さんはよくインタビューなので「 SF だからこそ（現実の設定では）恥ずかしいことをストレートに表現できる」という。宿命を描くのも SF だから出来やすいのかもしれない。