戯曲の小品三篇。あまり有名な作品群ではないものの、「山椒は小粒でも、ピリリと辛い」といった感じで、とても小気味良く、すばらしい仕上がりになっている。
とてもうまくできているな、と思ったのが最後の「ネズミたち」だ。最後の結末にいたるまでの経過が非常にうまい。それから、これは明示されてはいないものの、ある人物が実はだましていることが裏設定となっている。おそらく、観客の中でもそれに気がつく人は半分ぐらいだろうか。などと、自分が気がついたことを自慢してみる（こらこら）。
表題作の「海浜の午後」は人物描写でうまくだまされた。「なるほど、あの人が……とはね」という感じ。これはこれまでのクリスティーでは珍しいパターンかもしれない。
「患者」は、関係者の猜疑心をうまく描写しつつ、それを使ってうまくミスディレクションしている。これは盲点だったなぁ。