伊能忠敬に興味を持ったのはいつ頃だっただろうか。たぶん高校の時に教科書でこの名を知ったのが初めてだが、そのころから気になっていたかどうか、あまりよく覚えていない。大学生のときに、本屋でハードカバー版の『四千万歩の男』（全 5 巻）を見た時に、買いたいと思ったが、大学生にとってはあまりに高い買い物になってしまうためにあきらめた。それを考えると、やはり潜在的には気になる存在だったんだろうと思う。
明らかに興味を持ったのは、大学院生のときに文庫本の『四千万歩の男』を読んだときだ。このときはもう是非、忠敬ゆかりの佐原市に行きたいと思うほどだった。その後東京・埼玉に住むようになったものの、なぜか佐原市には行っていない。
この本は、『四千万歩の男』の関連本。著者井上ひさし氏があちこちに忠敬に関して書いたエッセイ等をまとめたものがメインとなっている。他にも対談と資料が載っている。エッセイの部分は、その度に忠敬について説明するために、基本的なことについての重複が多い。しかし、おかげでその基本的な点をしっかり頭に入れることができたように思う。
もっとも興味深かったのは対談・インタビューの部分だ。エッセイ等では著者が一人で書くために、自然と同じ方向性の文章になってしまう。しかし、対談・インタビューとなると相手がいるので、その分いろんな方向の話題が出てくる。それが面白い。特に富岡氏とのインタビューは、井上氏の作品群をよく読んでいるようで、その中での『四千万歩の男』の位置付けだとか、技法の違いだとかが触れられていて、なかなか興味深かった。
難をいえば、文字の大きさが大きすぎることだ。明らかに枚数稼ぎで感心しない。