零時館
本棚

アガサ・クリスティー自伝(上・下)

原題: AN AUTOBIOGRAPHY (1977)
アガサ・クリスティー 著、乾信一郎 訳
ハヤカワ文庫、757円(上下とも)、ISBN4-15-070086-9(上), ISBN4-15-070087-7(下)、1995年

これは、クリスティーの自伝であるとともに、エッセイ集でもある、と思った。

クリスティーはこれまで、小説以外でエッセイなどを出版したことはない(私小説はあるらしいが)。だから、クリスティーの人柄はほとんど分からなかった。それがこの自伝で大いに語られていて。自分のことについてだけでなく、周りの事柄に関するものの見方などを、その都度ページを割いて語っている。そのおかげで人物像がかなりクリアになった。

面白いことに、この自伝はあまり整理されずに書かれている。一応時系列に沿ってはいる。しかし、途中で話がそれることが多い。それでも、その話のそれ方が自然なので、違和感が少ない(ないことはないが)。まるで話を聞いているかのごとく、自然なのだ。ほら、人って、何か語る時、話がそれることが多いでしょう。でもちゃんと「話がそれちゃったけど」といって話を戻す。あんな感じ。

実は自伝なるものを読むのは初めてだった。だから、単に自分の歴史だけを書き連ねるものなんだろうと、漠然と思っていた。しかし、これはそうではなかった。うれしい裏切りだった。他の自伝はどうなんだろう。

仕方ないとは思うが、分量が多かった。クリスティーの平均的な長編作 3 作分ぐらいのページ数。しかも、会話部分が少ないので、文字数はさらに多い。久々にちょっと根気の要る読書になった。

(2004/03/12 読了)

E-mail : reijikan-kanshu@hotmail.co.jp
本棚に戻る
ホームへ戻る