地球内部における水の役割が重要であることは、この本を読む前から知っていた。しかし、なぜ水が重要なのか、あるいは、どこまでが水の影響といえるのか、などはあまり良く分かっていなかった。
この本は、地震と水の関係を中心にしつつも、地球内部での水の存在形態・役割・循環など話題が広範囲にわたっている。そのおかげで、水に関する体系的な知識を得ることができたし、これまで思っていた以上に水の役割が多岐に渡っていることが分かった。
ただ、個々の話題に関しては、その分野での最先端の研究であるためか、詳細に記述されており、馴染みのない話題に関してはとても全てを理解するのは難しかった。レビュー論文をまとめた形が本書になっていると思っても良いかもしれない。そのぐらい各章節のレベルが高い。逆にいうと、その研究に従事しようと思う人にはうってつけの入門書になるだろう。
それから、これだけ広範囲にわたっていても、地震との関係を中心にしているために、その他の、例えば海嶺とか、火山とか、マントル対流とか、湧水とか、そういう現象への関係についてはあまり触れられていない。そういう意味では、いっそのこと、地球内部と水というテーマでまとめられていた方が良かったのではないかと思う。もっとも、それだけ本が厚くなって、値段が高くなり、売れなくなる可能性も高くなるかもしれないが。