うまいなぁ。3 巻にもおよび長編 SF にもかかわらず、常に目を離せない展開が続くため、全く飽きずに読んでしまった。通勤電車で読んでいたけど、降りる駅になってもまだずっと読んでいたいと思ってしまうほどだった。
大震災における行政、政治、軍事がテーマとなった作品。関東大震災と阪神・淡路大震災がモデルになっているが、この二つを融合して、まったく新しい話になっている。舞台も日本ではないし、かといって外国でもなく、何百年後の（地球ではない）星の大都市になっている。ある事情によって、文明は現代に近いが、政治的背景は大正に近い設定となっている。そのため SF でありながら、歴史物にもなっている感じがある。
地震が起きる要因にも驚かされた。地球ではない星でどのような地震の要因を考えているのかが、個人的には興味があった。それがあっと驚く要因を用意していて感心した。なるほど、こうきたか、と。突拍子もないながらも、物理的にはよく考えられていると思う。
この他、どれ一つとっても綿密な下調べをしていることがよく分かる。それが中身をとても濃くしている。しかし、中身が濃いにもかかわらず、読みやすい。やっぱり小川一水さんはすごい人だと思う。