観測データからモデルのパラメーターを推測するインバース問題（逆問題、インバージョン）。その理論を体系的にまとめたのがこの本。従来、各分野でバラバラに発展してきたインバージョンの手法が著者の手によってすっきりとまとめられている。特に「線形 Gauss 型インバース問題の解」として 3 つのアプローチを紹介し、それらを最後に関係づけているところは見事としか言いようがない（すでにそういうテキストがあるのかもしれないが）。
原題にもあるように、地球物理学での応用を念頭に書かれているが、他の分野でも十分に応用できそうなぐらい、汎用性のあるまとめ方をしている。それがゆえに、訳者は地球物理学の文字を邦題につけなかったようだ。
ただ、その分抽象的なところが多いので、実際にインバージョンをやったことがある人じゃないと、なかなか頭には入らないかもしれない。私の場合は、すでに 2 例ほどやった経験があるので、それらを頭において読むことができた。そのため、抽象的表現も、具体的な例に対応させることが出来たので理解できた。もしそうじゃなかったら、きっと途中で放り出していただろう。