これはもう、設定の勝利、と言えるような作品。人物や背景の設定がここまでできてしまえば、あとはストーリーがうまく展開してくれる、と言う感じ。だから、とても話の流れが自然に感じられる。実は練りに練られているのかもしれないが。
惹句として、主人公タフのことをあこぎな商人としているが、これにはちょっと違和感がある。あこぎではないと思うし、方舟に乗ってからは商人でもない（環境エンジニアと名乗っているし、実際の働きから見てもその通りだと思う）。
たしかに交渉はうまい。しかし、だからといって、すなわちあこぎというのはおかしいだろう。あこぎという言葉には若干悪意が感じられる。しかし、タフはそれほど悪意はない。むしろ、良心的だ。どちらかというとスタートレックのピカード艦長に近い。
タイトルはキリスト教を連想させるが、全体としてはコミカルに仕上がっていて、実は内容はいたってまじめなんだけど、陰気くささがない（最後はまじめなところばかりが前面に出てきてしまっているけど）。そういう意味では、漫画という媒体でも読んでみたいなぁ。だれか漫画化してくれません？
ところで、2 の方の表紙は、もしかしてトリー・ミューン？なんか読んだイメージと違うなぁ。1 の表紙のタフは、なるほど、という感じ。もうちょっと目が細いとよりイメージに合うかな。