アートコミック『ギャラリーフェイク』に出てきた作品をセレクトして解説し た本。それぞれ、作品の解説、作者と時代背景の紹介、作品の所蔵されている美 術館の紹介、が各 2 ページずつ載っている。ところどころ、美術にまつわる トピックスが配置されていて、それがスパイスになっている。コミックスから 派生したとは思えないほど、とても充実した内容だ。
作品自体もカラーで見開き 2 ページを使って大きく載せていて、ある程度の観 賞にも堪えられる。ページをまたいでしまっているのは残念だけど、大判の本ではないから仕方ないだろう。 しかし、コミックスで見たときには気づかなかった細かな描写や迫 力などは十分に味わえた。
興味深く読んだのは美術館の紹介。どういう経緯で建てられたか、どんな 作品が観られるか、などが書かれている。美術館というのは単なる箱物かと思っ てしまうけれど、これを読んだら、それぞれの個性がよく分かる。なんだか、 美術館に行きたくなってしまった。
この本は、監修者が付いていて、監修者が書いた一部の文章にはそのことが明 記されている。しかし、そのほかは特に誰が書いたかは明記されていない。と いうことは、ほとんどは細野不二彦さんが自ら書いたということか。そうだとすると、す ごいな。マンガを書くのにここまで丹念に下調べをしたのか。もちろん、この本 を書くにあたって、新たに調べ直したのもあるんだろうけど、基礎知識がきちんと できていないと、こんな本を書こうとさえしないだろう。