小川一水さんの作品に惹かれる理由の一つは、地学系の話が多いことだろう。『復活の星』では地震を、『群青神殿』ではメタン・ハイドレートを扱っている。『回転翼の天使』でも、部分的にではあるけれど、地学的なネタが出てくる。そして、この『ここほれ ONE-ONE』も地学系だ。
しかも、この作品では、物理探査という、実社会ではあまり知られていない業界に光を当てている。私の知る限り、物理探査をここまで正面から取り上げたフィクションはない。
SF は 1 つ大きな嘘（ありそうにない仮定）をついた上に、科学的な展開をする。この科学的な展開がきちんとしていればいるほど面白い、と感じる。この作品もそうで、大きな嘘以外は、とてもよく調べているな、と思う。小川さん、地学系の教育を受けた人なんじゃないか、と思うぐらい。実際のところは分からないが。
学生の理学離れが叫ばれているけれど、その中でも地学離れはとりわけ深刻。高校生がこういう作品を読んで、少しでも地学を身近に感じてくれたらな、と思う。