サラ・パレツキーさんは寡作なほうで、長い時間をかけて１つの長編作品を書く。なので、読者としてはとても首を長くして待つことになる。もちろん、毎回、待っただけの価値のある作品が読めるので、不満はない。むしろ、手にとっただけで喜んでしまう。「やっとまたヴィクに会えた！」というだけでうれしい。
前作、『ハード・タイム』は内容がシビアで、かなりシンドイ読書体験となったが、今回はそこまでではなく、ややホッとした。『ハード・タイム』の路線が続いてしまったらどうしよう、なんて思っていた。ただ、次回作（すでにハードカバーで出ている）は 9.11 を題材にしているらしく、もしかすると多少シンドイ思いをしなければいけないかも、と覚悟している。
今回の作品で、おや、と思ったのが「誰がワルなのか」が分かりにくかったこと。記憶があいまいで確証はないけれど、これまでは「誰がワルなのか」が最初から明らかになっていて、その悪事をばらすためにヴィクが奮闘する、という図式だったように思う。それが今回はそうではない。だから結末の「勧善懲悪」を果たしたスッキリ感が乏しい。その分、最後までタイトルにある「ビター・メモリー（苦い想い出）」に焦点が絞られていたような気がする。