星新一が亡くなってもうずいぶんたんだなぁ。つい最近、と思っていたんだけれど。
その星さんの一生を追ったノンフィクション。伝記、とはまた違っていて、ドキュメンタリーに近いかも。星さんの生涯だけではなく、その父星一（ほしはじめ）が興した星製薬の歴史から、日本 SF 黎明期の歴史から、とにかく周りの歴史も丸ごとまとめきっている。すごい力作だ。
しかし、もっとも印象に残ったのはプロローグだった。星さんの在りし日の日常を奥さんの目を通して（奥さんのインタビューを通して）描き出している。星さんのエッセイでその日常は垣間見えていたものの、やはり家族の視点はから見るとちょっと印象が違う。
それにしても、ここまで徹底した取材は本当にすごい。最相さんの名前を初めて見たのは『絶対音感』だった。フュージョン系のコミュニティーで一時期話題になったのを覚えている。そのときは、本の中身も見ずに、そんなに騒ぐほどのものかな、という印象だった。しかし、この本を読んでみて、確かにこの著者ならば、騒がれるほどのものを書くだろうな、と思うようになった。それだけ、しっかりとした取材、構成、提起がされている。過去の作品を読みたくなってしまった。