アジアが迫ってきているのは確かで、実際、自分の専門分野でも、この 10 年で中国人の書いた論文が増えてきたように思う。しかし、それに対し、あせりはあまり感じない。経済力が増してきていることを考えれば、当然といえば当然。日本だって、以前は同じだっただろう。
この本では、そういったアジア諸国の科学を取り巻く動向をレポートし、それに対して日本の実力と問題点を記している。私は、アジアの動向は重要だけど、それを踏まえて日本はどうしたらよいかを考えるのは、正直なところ疑問を感じる。世界の動向を踏まえたほうが良いのではないだろうか。
日本以外のアジア諸国が迫ってきている事実は、日本だけではなく世界にとっても同じこと。しかし、西欧ではそれに対して何か策を講じている、という話は寡聞にして聞かない。この本でもそれをレポートしているわけでもない。むしろ余裕をもって見ているのでは、と思える。もちろん、情報がないので、そう思っているだけかもしれない。
日本国内の問題点は、アジアが、ということとは関係なく、問題であるのでは、と思う。もちろん、アジアの動向によって、その問題点が浮き彫りにされる（重要度が変わってくる）、ということはあるかもしれない。ただ、ちょっとあおりすぎかな、という気がする。ただ、それを自覚しているのか、日本の良いところもしっかりレポートしているのは良かったと思う。