『日本沈没』の最後に「第一部完」と書いてあった衝撃は今でも忘れられない。えー、そうなの？と。小松左京さん本人は意図していないだろうけれど、SF 史に残る「オチ」だと思う（そういう意味ではネタバレかも知れないけど、第二部が出たから良いよね）。
私が『日本沈没』を読んだのは比較的最近で、その時点で初出からもうだいぶ時間が経っていた。にもかかわらず、第二部が出ていなかったことから、おそらく第二部は書かれないままになるんだろうな、と諦めていた。しかし、その予想を覆し、谷甲州さん他のメンバーの協力を得て、とうとう出版された。そのいきさつはあとがきに書かれているけれど、こういう、チーム体制で作品を創る、というのは面白い。これまでも、2 人で 1 人のペンネームで共同体制で書かれている小説は少なからずあったけれど、今後はこういう映画やマンガ的にチームでの創作も多くなっていくかも知れない。
中身はというと、小松左京さんが描きたかったことがきちんと書かれているな、と思った。その上で、谷甲州さんの持ち味も存分に出ているように思う（谷甲州さん単独の作品は読んだことはないけれど、小松左京さんとは違う雰囲気だったのは確かで、しかもそれが心地よかった）。
日本人とはどういう人たちなのか、そういうのがこの特殊な状態でくっきりと浮き彫りにされる。こういうことができるのはやはり SF ならではだろう。日本人はもっと弱々しくて迫害されるかと思ったけれど、意外とタフに描かれているな、というのが私の印象。これは人によって大きく印象が違うだろう。
作品中で地球シミュレータが重要な要素になっているのは興味深い。研究者でもシミュレーションの重要性が共通認識としてあるかどうか怪しいところ（たぶん）なのに、著者達がそこに着目してくれたことは、とてもうれしい。