地球内部構造を高校生や大学生の共通教育で教える機会があるんだけれど、そのときに紹介する啓蒙書が非常に少ない。
この本は、よく他の本で紹介されている本で、名著とされているんだけれど、もう25年前なので、古さが気になっていて読んでいなかった。だから、紹介もしていなかった。
しかし、やはりきちんと読んで自分で判断すべきだろうと思って、購入。実際に読んでみて、名著といわれる訳が分かるような気がした。
陸と海、とタイトルにあるのだけれど、実際に内容も陸と海をキーワードにして、話を進めている。これが新鮮だった。地球内部の話は、えてして内部の話だけに終始してしまう。この本では、そうではなく、なぜ陸があるのか、海があるのか、という根源的な問いからはじめ、それを地球内部の構造と結び付けている。これが非常にスマートで、感心してしまった。
内容も、部分的に少しばかり古さを感じるところはあるものの、入門としては全く問題ない。文章も平易で、理解しやすいと思う。確かに今でも十分に啓蒙書として紹介できると思った。
著者はこの研究分野では第一人者（私も大変お世話になりました）。研究者として一流な人は、教育者としても一流とは限らないけれど、著者は教育者としても一流だったんだな、と思った。