零時館
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アガサ・クリスティー、ジョン・カラン著、山本やよい、羽田詩津子訳
ハヤカワ文庫
これはまさしく秘密ノート。創作ノートのことなんだけれど、どうやってクリスティーが作品を構想して言ったかを垣間見ることができる。
この創作ノート、きまぐれにメモに使われていたようだ。それが 70 冊以上もある。さらに人に読ませるように書いてはいないため、判読がかなり困難。それを著者のカラン氏が丹念に読み解いて、整理したとのこと。その労力は並大抵のことではない。
しかし、それだけの価値があったのだろう。実際、この本で明らかにされたクリスティーの創作の秘密は、非常に興味深いものだった。
クリスティーはときどき驚くようなトリックや結末を用意している。だから、緻密に用意周到なプロットを組み立てているものだとばかり思っていた。ところが違った。トリックはあらかじめ考えていたのかもしれないが、それ以外は結構二転三転していることが多かった。犯人を変更したり、登場人物を変えたり、ストーリーの組み立てを並べ替えたり、と、とても用意周到とは言いがたい。
面白いことに、登場人物の名前が、毎度のように最初のものと変更になっている。それだけ推敲を重ねているということは、名前を重要視していたのだろう。でも、それが読者に伝わっているか、というとどうなんだろうか。少なくとも私は（イギリス人ではないことも大きいと思うが）変更による違いがあまり分からなかった。このあたりはイギリス人に聞いてみたいところ（知り合いいないけど）。
(2011/03/08 読了)
E-mail : reijikan-kanshu@hotmail.co.jp
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