絵本というので、シンプルなストーリーを期待していたが、全然違っていた。詩的な短編集で、『アイソパラメトリック』に近い。写真の代わりに絵を配した形だ。
ということで、楽しみ方は『アイソパラメトリック』と同じ。ゆっくりと朗読するぐらいのスピードで読んでみる。「海岸を歩く」「僕は一所懸命に走った」「汚染」「かぶり」「冒険の船乗り」などがこの読み方が似合うように思う。
一方、今回は会話の多い作品も多く、それらはゆっくり読むのが難しい。でも、普通の会話のテンポで読んでも十分面白い。
好きなのは「僕は一所懸命に走った」と「クリスマスイブ」。他にもあるが、飛び抜けているのはこの 2 つだ。空想的なんだけど、何かの暗喩でもあるようで、共感するものがある。しかも詩的なのに、起承転結がはっきりしていて、読みやすい。すごい才能だなと思う。
ただ今回は他の作品で、ちょっと文章が冗長的だったり、要らない接続詞があったり、説明的だったりして、どこかテンポが悪いと感じたものもあった。短編だけにこういうのは気になってしょうがない。もうちょっと余分なものを削ぎ落として欲しかったなぁ。