これまでに読んだファンタジー物のなかでは格段に良かった。とくに、最終巻の「暗黒からの再生」は泣けた。本当に目がウルウル来てしまった。
実は、この話のテーマはそれほど魅力的なものではなかった。神に頼りすぎる人々が信じられないのだ。だから、第2巻あたりでラストがどう締めくくられるかなんとなく想像がついたし、そこで主張したいことは、当たり前のように思えた（ただ、本来中高生向けなので、その時期にいろいろ迷っている人たちには、眼を開かせられるような話なのかもしれない）。
それにも関わらず感動してしまうのは、菅さんの構成力・文章力のためだ。とにかく盛り上げ方がうまく、豊かな表現力によってその効果が倍増する。日本でも有数のストーリーテラーだと思う。
ちょっと気になったのは、場所の設定が『ゆらぎの森のシエラ』や『＜柊の僧兵＞記』と似ていることだ。集落が点在して、その間を移動していく、という点が共通している。ロールプレイングゲームの影響だろうか。もうこの設定はそろそろ飽きてきた。