クリスティーの処女作。そのせいなのか、それとも訳のせいなのか、とにかく読みにくかった。特に前半の地の文。英文独特の言い回しが多かったのもその要因だろうが、それだけではないと思う。
しかし、内容は思いのほか良かった。クリスティーの代表作として選ばれるほどではないにしろ、他の作品に比べたら標準クラスではないだろうか。それを処女作で書いてしまっていると言うのはやはりすごいと思う。
『ゴルフ場殺人事件』の時に思った、ホームズ物の影響はこの作品でもやはり感じた。特にワトソン役のヘイスティングス。あるときは読者の眼をミスリードし、あるときは名探偵に重大なヒントを与える。ミステリ作家にとってユーティリティ的な存在なんだろうな。