うわぁ、やられた。シリーズ最後の最後にこんな仕掛けがあったとは。ずっと森作品を読んでいた人なら、びっくりしたはず。思わず V シリーズを見直した。きちんと伏線が張ってあった。近作『捩れ屋敷の利鈍』や『朽ちる散る落ちる』でなにかどんでん返しがあるなと思っていたが、その予感は当たった（というか、そう予感させる書き方だったから当たり前かもしれないが）。しかし、全く違うベクトルの仕掛けだった。
メインの今回の事件に関しては犯人の予想が当たっていた。トリックの予想は外れていたが、キャラクター設定でそれっぽく思えたからだった。トリックも予想を外れたとはいえ、多分、予想した方法でも可能だと思う（境界条件があいまいなので、他にも方法があるかもしれない）。
ところで、森作品にしては珍しく「お茶」が出てきた。大体いつもコーヒーが定番で、お茶が出てきたのは初めてじゃないだろうか（紅茶は出たことあったような気がするが、記憶はあいまい）。ずっとコーヒーしか出なかったのが気になっていた。森さんが普段コーヒーしか飲まないせいなのかもしれない。でも、小説でどのキャラクターもコーヒーしか飲まないというのはどうにも不自然すぎると感じていた。コーヒーに限らず、ささいなアイテムが画一的で、森作品の厚みを減じているように思えた。それが今回ようやく打破されそうな兆しが見えた。今後に期待。